国連安保理改革、準常任理事国の創設目指せ 神余隆博氏関西学院大学教授(元国連大使)
2022/10/25 2:00日本経済新聞 電子版
ロシアのウクライナ侵略と拒否権の乱用で国連安保理改革の機運が高まっている。今年の国連総会一般討論演説では66カ国が安保理改革に言及した。バイデン米大統領は常任・非常任理事国双方の拡大を支持した。しかし、日本としては常任理事国を拡大することが正しい改革なのか、また実現可能なのか再考する必要がある。多くの加盟国の本音は、安保理改革は必要だが特権を持つ常任理事国を増やすべきではなく、拒否権はなくすか制限すべしということだろう。これを安保理改革の新しい出発点にすべきだと考える。
日本は来年1月に12回目の安保理非常任理事国に就任する。今次国連総会で、拒否権の抑制的な行使を求める総会決議案(ジェノサイド=大虐殺=には拒否権を行使しないなど)を米英仏や有志国と組んで提出するなど、拒否権改革に積極的に取り組むべきである。
安保理改革は1994年から国連総会で議論され、2009年に政府間交渉が開始された。しかし案文に基づく交渉ではなく、13年間、小田原評定が続いてきた。これでは改革につながらない。早急に総会決議案の作成交渉に移行すべきだ。ただ、常任理事国の拡大は米中ロの間で思惑が異なり、ロシアや中国は日本とドイツを常任理事国にする案には反対し、憲章改正案の批准もしないだろう。
それ故に日本としては戦術を転換し、任期が4~8年と長く、連続再選も可能な「準常任理事国」(もしくは任期の長い非常任理事国)の創設を目指すべきである。議席は総会の選挙で選ばれるので正統性がある。数は6~8カ国またはそれ以上とし、複数国の共同議席とすることも考えられる。
改革は2段階で進め、第1段階として25年ごろまでに準常任理事国の創設を目指す。日本やドイツ、トルコ、韓国などのミドルパワーが選挙を経て就任し、国際平和と安全への貢献を通じて安保理の信頼性と機能を回復する。そして第2段階として、国連創設100周年の45年ごろまでに常任理事国の改革を行うのである。
こうした改革案に関心のある人は日本国際平和構築協会のHPに掲載している「現実的な国連安全保障理事会の改革にむけて」と題する提案を参照してほしい。