神余隆博・星野俊也大使が安保理改革討論会で現実的なアプローチを提唱 (17/09/2022)

神余 隆博 教授

 ロシアのウクライナ侵略、北朝鮮の核・ミサイル開発等に関し安保理が機能せず、安保理の機能不全が顕著になった。安保理改革は、2009年に政府間交渉が開始されたが、テキストベースでの交渉とはならず、審議を行っているだけである。このような交渉は何年続けても改革には繋がらないので、交渉のフォーマットを変更して、具体的な安保理決議案の作成交渉に移行すべきである。

 来年1月に日本は安保理非常任理事国に就任する。それに先立ち、今年の国連総会において、国連憲章の改正を伴わない改革、具体的には拒否権行使のあり方に関する指針となるような総会決議案(例えば憲章第27条3の紛争の平和的な解決に関する紛争当事国の棄権義務の厳格適用やジェノサイド等の事案においては拒否権を行使しない等)をACTグループやその他の有志国と組んで提出するなど、総会における作業に積極的に取り組むべきである。
憲章の改正を伴う安保理の構成の見直しについては、日本やドイツは実現困難な常任理自国の拡大を含むG4案のオプションではなく、現実的な選択を行うよう戦術の転換を図り、ブレークスルーを生み出す必要がある。

 安保理常任理事国を拡大する改革案が実現する可能性は極めて低いことから、日本はG4案を凍結して、準常任理事国または再選可能な長期の非常任理事国ポストの創設を実現すべく、交渉方針の転換を図るべきである。これらのポストは選挙で選ばれるが、任期は4年から8年で再選可能とし、拡大数は6~8ケ国とする。この準常任理事国は複数国の共同議席とすることも可能である。なお、現在の常任理事国は選挙で選ばれないので、総会等において定期的にそのパフォーマンスを審査すべきである。

 改革は2段階で進める。第1段階(短期改革)として2025年までに準常任理事国を創設する。日本やトルコなどの国際の平和と安全に貢献することのできるミドルパワーはそのメンバーとなるべきである。その後第2段階(中・長期改革)として、2045年の国連創設100周年に常任理事国を含む改革を行う。
各国は自国の国益のためではなく、国連安保理の信頼性と機能を回復するために真に実現可能な改革を目指すべきである。


星野 俊也 教授

 在京トルコ大使館でのセミナーでの私の発言ポイントは以下のようなものでした。

◎安保理改革には4つの側面がある。
‐ 代表制:議席の見直し・・・歴然たる変化に対応した改革に踏み込むべき。
 ⇒ 改革による「正当性」強化。
    1945(P5⊂11/51=21.6%) 1965(P5⊂15/118=12.7%) 2022(P5⊂15/193=7.8%)
 ⇒安保理を20カ国に拡大で10.36%に。1965年の12.7%レベルにするには25カ国くらいに拡大。
   → 旧敵国、旧植民地、非核兵器国が常任理事国にいない現状のアナクロニズム。

‐ 民主制:拒否権の見直し・・・リヒテンシュタイン決議(説明責任)。しかく、より本格的な改革を。

‐ 透明性:安保理の議論が密室でのものにならないように手続きを工夫。日本は安保理文書手続き作業部会議長で貢献。

– 開放性:すでに安保理メンバー以外の国が安保理公開討論などで議論をできるようになっている。

◎2025年までに安保理改革を実現する。そのためには、1963年12月採択の国連総会決議1991を参考に、その60周年となる来年12月までに決議採択を目指す。
  ⇒具体的な提案:1963年12月の国連総会決議1991号(議席拡大の国連憲章改正を決議。1965年9月1日までに加盟国が各国内で批准を勧告)にならい、その決議採択の60周年となる2023年12月までに安保理議席拡大の憲章改正を総会決議で採択し、2025年9月1日までに加盟国が各国内での批准をめざすロードマップをつくる。

<参考までに、1963年12月の国連総会決議1991号を添付します。>
 これが実現すると、国連創設80年となる2025年に安保理議席拡大が決まることになります。

◎気候変動、コロナ禍、そしてロシアのウクライナ危機で安保理の機能と正当性が問われているとき、安保理の仕組みを何も実質的に変えることができなかったとすると、将来の世代から私たちの世代は強く非難されるだろうし、顔向けできない。

◎トルコ政府案を決議案として加盟国に回覧し、意見を集約することが重要。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です