元衆議院議長の自由民主党の伊吹文明は現実を忘れては生きていけないが、理想を忘れては生きている値打ちがないと示唆し、立憲民主党の福山哲郎幹事長は国益が過度に強調されていることに不安を覚えつつ、国際政治への関心が薄れる中、世界連邦が理想を掲げてきた歴史は大切であると述べた。国民民主党の玉木雄一郎代表が貧富の格差の拡大を阻止するためには世界連邦の理念・考え方が重要性であると述べ、公明党の井上義久元幹事長がグローバルガバナンスの必要性を痛切に感じていると指摘、共産党の笠井亮政策委員長が国連の SDGs 達成のため、国際連帯税なども真剣に議論すべき、柴山昌彦文部科学大臣は世界連邦で、政府、議員、それ以外のものも含めて、持続可能なガバナンスにむけ機運の醸成を求めた。社会民主党の福島瑞穂議員が国連改革や、G20 と安保理の関係、富の不平等是正や、SDGs 達成など、よりよい社会を作るためのグローバルガバナンス推進委員会が設立されたことを歓迎する。世界連邦国会委員会の事務局長の猪口邦子議員がグローバルガバナンス推進委員会で専門家の先生がたが、ポピュリズムの台頭とどう向き合うか、マルチラテラリズムの秩序とどうバランスをとるかの課題を討論することを歓迎する。(谷本真邦)
(世界連邦日本国会委員会 70 周年を機に、グローバルガバナンス推進委員会の設置、及び、その座長に長谷川祐弘元国連事務総長特別代表の選任を、全会一致で採択)
–以下各党の代表者より挨拶–
私は、党というよりも、この会の顧問として一言申し上げたい。現実を忘れては生きていけないが、理想を忘れては生きている値打ちがないと言われる。政治の世界でも現実を忘れては統治できないが、理想を忘れては政治をやっている意味がない。
現在の政治で最も生々しいのは、米中の貿易摩擦である。各々の国があり、国境があり、国益がある。ましてや、それぞれの国に住んでいる民族が違えば言語が違うし、宗教が違う。あるいは民族が生きてきたパターン・伝統がそれぞれ違うので、中々世界連邦という理想にたどり着くのは難しいと思うけれども、現在の米中の貿易紛争を見ていると国際的な取り決めとか協定がお互いに守られないままきている。自分の国益を守らなければいけない上に、民主主義という、チャーチルのいう「これしかないけれど厄介な制度」がある。国の統治者としては、民主主義において多数の支持を得なければならない。そのため主権者の希望に沿って国益を守るという面が強くなって国際的な取り決めがおろそかになってしまう。 落ち着いて考えれば、あるいは長期的に考えれば、今の米中摩擦は当事国の国民のためにならないし、世界経済にも悪い影響をもたらす。
理想を忘れては統治をしている価値がないということに思いをはせれば、ここで政治家が世界連邦の精神をお互いに確認しあうことが大切である。
長年世界連邦に携わり、ICC 加入の仕事もした。国会で、党派を超え、普遍的に共通理解が出来るということでは、この運動は際立っている。私は政府の立場でも、国連本部で核不拡散について外相名代で話し、首相補佐官として南スーダンも担当した。この世界連邦で、政府、議員、それ以外のものも含めて、このガバナンスにむけ、機運の醸成を求める。
長年の活動に感謝します。民主党政権時代、短い期間ながらマルチ、バイともに外交安全保障の分野を担当し、アフガニスタンなど紛争地にも訪れた。
伊吹先生が話されたように、国益と国益のぶつかり合いという面と、それを超えたマルチな利益の追求という、二つの面がある。今、そのバランスが崩れ、国益が過度に強調されていることに不安を覚えている。国際政治への関心が薄れる中、世界連邦が理想を掲げて長年に渡って築き上げてきた歴史は大切である。
私は地元が京都だが、京都府綾部市の前市長・現市長がこの運動に大変熱心に取り組まれ(衛藤会長、強くうなずく)イスラエルとパレスチナ問題でも頑張っている。私も微力ながら取り組むことを誓って挨拶に代えたい。
私も衛藤会長のご指導の下で頑張っていきたい。理想と現実のことで伊吹先生が話したことは、私たち政治家すべてが考えるべきことである。
今、多くの問題が国境を越えて生じている。戦争の原因として、貧困の問題がある。世界のトップ30人が貧しい方の20億人分の資産を持っているような、貧富の格差の拡大をどのような仕組みで解決していくか考える必要がある。この解決のためには世界連邦の理念・考え方が、今日的な重要性・価値を持っている。
創設70年の世界連邦に、私も長く関わってきたことに誇りをもっている(事務局註 現職の主要な役員の中で最も長い。2005年の衆議院決議の提出者の1人でもある)。いまグローバルガバナンスの必要性を痛切に感じている。今回長谷川祐弘氏を座長にグローバルガバナンス推進委員会ができることは、たいへん意義深いことだ。ぜひ議論を重ねて有効な提言が欲しいと感じる。
創設 70 年を、諸先輩ともに迎えることは嬉しい。国会の中で党派を超えて、戦争をない世界を作ろうと立ち上がった意義が、今日ますます大きくなっている。これがグローバルガバナンス推進委員会の発足ということになったと思います。私は被爆二世で、一昨年の国連の核禁条約締結ということもあり、核廃の議論は時期にかなっている。そして他にも国境を越えた課題は多々あると思う。世界の恒久平和、世界連邦への道の探究などをうたう 2005 年の衆議院決議を、改めてかみしめ、国連の SDGs 達成のため、国際連帯税なども真剣に議論をしていただきたい。
(谷本真邦事務局長より、グローバルガバナンス推進委員会第一回会合の開会を宣言、長谷川祐弘座長の講演をはさんで)
国連改革や、G20 と安保理の関係、そして富の不平等是正や、SDGs 達成など、よりよい社会を作るための、示唆に富んだ話は、ありがたい。今回グローバルガバナンス推進委員会が設立され、どうやって平和を構築し、公平な社会を作り、グローバルガバナンスを強化してくか、私個人も、党も、国会も、党派を超えて力を合わせ頑張っていきたい。今後も示唆をいただきたい。
(各分野の問題提起をはさんで)
グローバルガバナンス推進委員会での各専門家の先生のお話しはありがたい。政治の側の身になると、ポピュリズムの台頭とどう向き合うか、マルチラテラリズムの秩序と、どうバランスをとるかが問題だ。啓蒙主義の本拠地のヨーロッパからもポピュリズムは出てきている。啓蒙主義でいうと、私の書いている本と座長の本はテーマが近い。それはルソーがグローバルを書くならどういう内容になるか、グローバルな法律や統治の概念をどう書くか、というものだ。ただ、世界連邦という組織がなくても、すでに国会では国際法の生成に関わって、採択までやっている。例えば、船舶座礁による海洋汚染の保証と強制保険についてなどの仕事もした。国際社会において、予見可能性、秩序ある対応、そして、より理想に近いものにもって行く。これが世界連邦の国会委員会がある意味であり、皆さんからも、例えば軍縮をどういくのか、など、いろいろ智慧をいただきたいと思う。