深刻化するグローバルな脅威が示唆する新たな思考方法の必要性
私は二年前に理事長に就任した時に、新型コロナウイルスが拡大して世界中で多大な感染者と死者をもたらしている状態に鑑みて、私たちは世界の市民と共に新たな世界観に基づいたビジョンを持って、リーダーシップを発揮するべきであると述べた。その2年後の2022年3月に再び理事長に選出されたが、今度はウクライナ危機が国際社会の最大な課題となっていた。新型コロナそしてウクライナ危機が齎す国際社会の危機状況に向かって、理想を現実に変えるためには、新たな思考方法で行動することが必要であるとの認識を深めた。
ロシアによるウクライナ侵攻が2022年2月に始まると、アントニオ・グテーレス国連事務総長は国連総会で演説し、この軍事活動によって被害を受けたすべての人々を支援し、国連加盟国が一致団結することが求められていると示唆した。そして、国連が平和を実現するために創設されたことに鑑みて、グテーレス事務総長は、2022年3月10日の国連総会での演説で、平和を主要な「グローバル公共財」としてとらえ、協力と連帯の下で団結することが求められていると述べた。
ウクライナ情勢が長引く中、ウクライナのゼレンスキー大統領が訴えた如く、国連の安全保障理事会を再構築する必要性があることは確かである。そのためには国連を再構築するには、国連が75年前に創設された世界そして現在のみならず、将来の世界の「状況」を反映したグローバル・ガバナンス・システムを創設すべきであると考える。日本国際平和構築協会は、世界平和と安全を保障することが出来るように会員のみならず有識者との対話を深めて、国連の安保理事会を改革あるいは再構築すべきか模索していきたいと思う。そのためには、国家の安全保障と共に人間の安全保障を重要性を認識し、ウクライナ危機に代表される国家間の紛争や新型コロナ・パンデミックのみならず気候変動やサイバー戦争、偽情報キャンペーン、大量破壊兵器の脅威など、あらゆる脅威に対処出来きるように国連を再構築するために当協会が貢献できることを願っている。
日本国際平和構築協会は3月19日に開催された総会で、5人の新しい理事が選出された。その中には、アフガニスタンで国連事務総長特別代表をなされた山本忠通大使、国際移住機関(IOM)のミャンマー事務所代表を務めた中山暁雄氏、元世界銀行職員の黒田和秀氏、国連食糧農業機関(FAO)の中近東地域事務所上級総務サポート担当官の池田明子氏、コソボから来日にして神戸大学で博士課程におられるアルベニータ・ソパイ(Arbenita Sopaj)氏そしてジュネーブにある国際・開発研究大学院(IHEID)で国際関係学修士号取得を目指し勉強中の井上大樹氏が新たな理事となられた。このような経験の富んだ方々や異国の人々そして若い方々が理事になったことは、変遷していくグローバルな課題に日本国際平和構築協会が新たな思考方法で問題解決に向かって理解を深め行動していけると確信している。
令和4年(2022年)4月
長谷川 祐弘
特定非営利活動法人 日本国際平和構築協会 理事長